
材料に指定硬度があったり、焼鈍材っていうのがあったりしたから、熱処理について調べたんだけど、

自分で調べてみるなんて偉いね。何かわからないことあった?

いや、書いてある意味は分かるんだけど、今いち熱処理の違いだったり、何でそうなるのかがわからなくて頭に入ってこないんだよね…。

専門的な解説だと情報量が多すぎて、整理しきれないよね。
技術を学ぶには『何で(目的)』と、『どうやって(方法)』をしっかり分けてとらえてみて。
今回は材料の話とは切っても切れない熱処理について解説します。関連した内容でよく出てくる内容とは思いますが、意外と理解できていない熱処理の基本から説明していきますので、どうぞ最後まで読んでいただけたらと思います。
- 熱処理用語が難しくてわからない。
- 似たような用語が多くて、理解が曖昧になっている。
- 何で熱処理をするのか結局のところ分かっていない。
- 熱処理について、専門用語の意味が理解できるようになる。
- 熱処理のメカニズムについて大事なところが理解できる。
- 熱処理の狙いと効果について理解できる。
熱処理とは
熱処理とは、金属に加熱と冷却を加え強さ、硬さ、粘さ、耐衝撃性、耐摩耗性、耐食性、被肖性、冷間加工性等といった材料の性質を変える処理のことをいいます。
熱処理の種類
代表的なものとしては、焼き入れ、焼き戻し、焼きならし、焼きなましがあります。

これだよ、これっ!似た名前つけて…。よくわからない!

加工の目的とそのプロセスを説明するわ。
実はやっていることは似たものだったりするからわかりにくいのよね。
焼き入れ
鋼を変態点(組織変化が起こる温度)以上の温度まで加熱し、一定時間放置した後、水あるいは油によって急冷すること。
目的:鋼材の硬度を高めるための熱処理
方法:高温状態にした後、水や油などで急冷する。

非鉄金属でも熱処理は行われるのに、焼き入れって非鉄金属では聞かないよね?

加工の目的が適さないからね。非鉄金属は焼入れによる硬化がほとんど期待できないから、加工硬化や表面処理で対応することが多いわ。
焼入れによる硬さの上昇は、鋼材中に含まれるC(炭素)の量が大きく影響します。そのため、焼入れをして使用する鋼種はある程度のC含有量が必要となります。
焼き戻し
焼入れを行った材料に、再度熱を加え、粘りと靭性を加える処理のこと。
目的:焼入れを行った材料は脆く、割れやすい状態のため、焼戻しを行うことで靭性を材料に付与することが目的
方法:変態点以下の高温(450‐650℃)の範囲で加熱し、一時間程度保持した後に空冷する処理のこと。最も多く用いられている処理で、強度と靭性を得ることができるためシャフトやボルトなどの部品をつくる際に用いらます。
焼きならし
金属を一定の温度まで加熱後、空冷し組織を均一化、微細化する処理のこと
目的:圧延などによって加工された金属は、組織が不均一となっていたり、内部に残量応力が存在しておりこれらは金属の機械的性質に悪影響を及ぼします。そのため、焼ならしの処理を行うことで、組織の均一化と残留応力の除去を行い、機械的性質の向上を行うことが目的です。
方法:変態点より30-60℃ほど高い温度で加熱し、その後空冷するのが通常の焼ならし処理です。
焼きなまし(焼鈍)
金属を軟らかくするために熱を加え、一定時間保持した後徐冷する処理のこと。
目的:金属を軟らかくすることで、プレスや鋳造などの加工をしやすくすることが目的です。また、組織の均質化や内部応力の低減のためなどにも行われます。
方法:材料を変態点+50℃以上の温度に加熱した後、一定時間保持し徐々に冷却させる方法です。加工工程で発生した残留応力などのひずみを取除き組織を軟化させるために行われます。最も一般的な焼なましの方法です。
溶体化処理(固溶化熱処理)
金属材料を高温で均一に加熱し、その後急冷することで特性を改善する処理。
目的:合金中に溶け込んでいない元素を均一に溶け込ませ、固溶状態を形成する処理
方法:高温状態にした後、水や油などで急冷する。

あれっ?やってること焼き入れと同じじゃない!?

やっていることはほとんど同じね。一般的に焼き入れとは硬化を目的とした処理だけれど、溶体化処理は金属材料の特性を均一化し、耐食性や機械的強度を向上させることを目的としてるという違いね。
時効処理(析出硬化処理)
時効処理とは、金属合金を適切な温度に保持して、時間をかけて析出を進行させることで、合金の機械的性質を改善する熱処理です。時効処理によって、材料内の析出物が硬化し、結果として材料の強度が向上します。
目的:金属合金の機械的性質、特に強度や硬度を向上させること。
方法:合金内に溶け込んでいた元素が熱処理により析出し、合金全体の構造を補強するというものです。析出物が材料内に微細な障壁を作ることで、転位の移動が抑制され、結果として硬度や強度が向上します。
自然時効:室温で自然に時間をかけて行われる処理で、特にアルミニウム合金などで使用されます。
人工時効:特定の温度で加熱し、短時間で強度向上を図る処理方法です。

これは、焼きならしだったり、焼きなましとなんか似てる気がする。

材料を適切な温度に維持して時間をかけて処理するということは同じかもしれないわ。温度や時間の違いもあるけれど、その目的別にそれぞれ処理方法があるってことを覚えておいてね。
適用される代表的な材料
焼き入れが適用される材料
炭素鋼
炭素含有量が0.4%以上の炭素鋼や、クロム・モリブデンなどの合金元素を含む合金鋼は、焼入れによって十分な硬化性を得られます。
代表的な材料:S45C、SCM440、SK材
ステンレス鋼
マルテンサイト系ステンレス
代表的な材料:SUS420J2、SUS440C
焼き入れによる硬化は、炭素量の多いマルテンサイト組織が存在することを前提としています。そのため、マルテンサイト系以外のステンレスでは、焼き入れを行ってもほとんど硬化しません。(析出硬化系ステンレスは、全般的に炭素の含有量が少なく、炭素量の多いマルテンサイトの形成で硬度を高めるというよりは、添加元素の析出によって硬度を高めているステンレスです。)
時効処理(析出硬化処理)が適用される材料
アルミニウム合金
アルミニウム合金は、特に自動車産業や航空産業で時効処理が頻繁に使用されています。
2000系、6000系、7000系のアルミニウム合金が時効硬化します。
代表的な材料:A2017、A6061、A7075
ステンレス鋼
析出硬化系ステンレス鋼はクロムニッケル系のステンレス鋼に、Al・Cu・Mo・Ti等を少量添加している鋼種です。
代表的な材料:SUS630、SUS631
銅合金
ベリリウム銅やチタン銅、コルソン合金などが時効硬化します。
チタン合金
高強度と耐腐食性を持つ金属であり、時効処理によりその特性がさらに強化されます。チタン合金は航空機エンジンや医療用インプラントに使用されており、時効処理による高強度化がその性能を支えています。
ニッケル合金
インコネルやハステロイなどのニッケル基合金は、信頼性の高さから航空機などで使われています。
代表的な材料:ALLOY 718(INCO社)、MAS1C(大同特殊鋼社)、HASTELLOY C-276(Haynes社)
コバルト合金
MP35NやElgiloy合金などが時効硬化します。
まとめ
- 熱処理は、合金の機械的特性を改善するための重要なプロセス。
- 熱処理とは、加熱することと冷やすことだが、その目的によって色々な処理方法がある。
- 金属材料にはその特性が変化する変態点(温度)があり、熱処理はその特性変化の性質を利用している。
- 材料の成分によって、熱処理により変化する特性も異なるため、材料毎に適した熱処理がある。

熱により変化する特性を利用しているから、その温度管理は非常に重要になるわ。
正確な温度管理により、材料の特性を制御し、望ましい組織構造を実現できるのね。

料理は科学。料理のコツは火加減っていうものね。
よっ!大将!熱いの1本おねげぇしやすっ!

(一体あなたのキャラはどうなってるの…?)