
ステンレスの価格って変動が多いし、よく記事にもなっているよね。

『5月契約価格をトン5万円値上げ』みたいな感じね。

何でこんなに価格の変動が多いんだろう?
ステンレス材の価格は、ニッケルやクロムの価格、為替レートなどの要因に影響されます。
今回はステンレス材の価格要因と、価格推移について解説していきます。分かりやすくまとめていますので、是非最後までお読みください。
- ステンレスの価格要因
- 価格推移情報の見方
- 契約価格と市場価格の違い
価格の影響要因
①原料価格
ニッケル価格: ステンレスの主要成分であるニッケルの価格は、SUS材の価格に直接影響を与えます。
クロム価格: クロムもステンレスの重要な成分であり、その価格変動も影響します。
②為替
為替レート: 円とドルの為替レートは、輸入品の価格に影響を与えます。
➂需給環境
需要と供給: 市場の需要と供給のバランスも価格に影響を与える要因です。
国際情勢: 国際的な政治経済の動向も価格に影響を与えることがあります。
④スクラップ価格
ステンレススクラップの価格もステンレス製品の価格に影響を与えます。ステンレスはリサイクルが容易であり、日本のステンレス鋼生産時のスクラップ使用比率は約70%と高水準です。(世界平均は約50%)

『LME』って何?

LME:ロンドン金属取引所「LME(London Metal Exchange)
世界最大規模の非鉄金属専門取引所で、ここでの取引価格が世界中のニッケル相場の基準となってるよ。
価格推移情報の見方

それじゃあ次に、発表されているステンレス価格の推移をみてみよう。
日鉄ステンレス 製品価格の改訂履歴
契約月 | 契約価格前提 (前2カ月平均) | 対前月価格改定幅(千円/トン) | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Ni ($/Lb) | Cr (¢/Lb) | 為替 (円/$) | ニッケル系(SUS304) | クロム系(SUS430) | |||||
ベース | アロイ | 販売価格 | ベース | アロイ | 販売価格 | ||||
2025/03 | 6.96 | 143.00 | 155.28 | – | -5 | -5 | – | -5 | -5 |
2025/02 | 7.00 | 148.50 | 156.16 | – | -5 | -5 | – | – | – |
2025/01 | 7.08 | 154.00 | 154.81 | – | -5 | -5 | – | – | – |
2024/12 | 7.38 | 154.00 | 152.77 | – | 5 | 5 | – | – | – |
2024/11 | 7.47 | 157.00 | 147.63 | -10 | 5 | -5 | – | – | – |
2024/10 | 7.34 | 160.00 | 146.00 | 10 | -15 | -5 | – | -5 | -5 |
2024/09 | 7.41 | 160.00 | 153.30 | – | -20 | -20 | – | -5 | -5 |
2024/08 | 7.69 | 160.00 | 159.03 | – | -20 | -20 | – | – | – |
2024/07 | 8.40 | 160.00 | 158.07 | – | – | – | – | 5 | 5 |
2024/06 | 8.55 | 160.00 | 155.88 | – | 25 | 25 | – | 5 | 5 |
2024/05 | 8.08 | 156.00 | 152.59 | – | 20 | 20 | – | 5 | 5 |
2024/04 | 7.66 | 152.00 | 150.59 | – | 10 | 10 | – | – | – |
2024/03 | 7.35 | 152.00 | 149.08 | 15 | 5 | 20 | 15 | – | 15 |
2024/02 | 7.37 | 156.50 | 146.39 | – | -15 | -15 | – | -5 | -5 |
2024/01 | 7.57 | 161.00 | 148.04 | – | -20 | -20 | – | -5 | -5 |
引用:https://stainless.nipponsteel.com/price/products.php

!? まず単位がわからないよ!

補足しながら説明するよ。
- $/Lb:1ポンド当たりのドル価格
- ¢/Lb:1ポンド当たりのセント価格
- ベース:材質との関係が弱く、鉄原料や固定費の値上がりに対応した値上げ分
- アロイ:合金元素原料の値上がりに対応した値上げ分


Ni ニッケルが上がると、ニッケル系(SUS304)のアロイ価格が上がってる。

SUS430の主要元素はクロムと鉄。SUS304はそれに加えてニッケルを8%~10.5%含有している材料だよね。

24/03から24/06でNiは1.2しか上がってないように見えるけど、累計で60円/kgも変わるんだ。

それぞれの為替レートで円/kgに変換してみよう。
【Ni(ニッケル)】 2024/03:7.35$/Lb⇒2,416円/kg、2024/06:8.55$/Lb⇒2,938円kg 差額:522円/kg
【Cr(クロム)】 2024/03:152¢/Lb⇒500円/kg、 2024/06:160¢/Lb⇒550円/kg 差額:50円/kg

円/kgで見てみるとかなりの金額が変わってるんだね!

製品単価への影響額は独自の計算方式によるから、全体的な傾向として考えてね。
契約価格と市場価格について

価格が変わる要因についてはわかったよ。そうすると↓のような発表があったら4月から材料の価格が上がっちゃうの?


記事に書いてある向け先や時期、品目について注意してみてみよう。
向け先は、国内店売り向け
時期は、2024年4月契約価格
品目は、ニッケル系冷延薄板と厚中板
国内店売り向けというのは、日鉄ステンレスが材料の卸売業者向けの販売価格を改定するということ。
2024年4月契約価格というのは、卸売業者が同月内に注文する価格ということ。対象注文のロール月(実際に材料が生産される月)は契約後1~2か月後(品目やその時の状況による)になる。
品目はニッケル系に限られるのでクロム系は対象外。また冷延薄板と厚中板が対象。

材料屋さんに価格改定後の材料が届くのはもう何か月か後になるんだね。

さらに言うと、卸売業者の在庫は随時入れ替わっているから、ある時から価格改定後の材料にいきなり入れ替わるわけではないんだ。材料価格をどう勘定するか、その会社の考え方によって変動に幅があるんだよ。
※アルミニウム材料については、上記とは異なりNSPルールが広く使われています。
まとめ
- ステンレスの価格は原料価格、為替相場、需給環境、スクラップ価格によって変動する。
- その中でも、ニッケルの影響額は大きく、ニッケル系ステンレスの価格変動が大きい。
- 契約価格はあくまでもその時の契約価格であり、市場価格への影響は遅れて反映される。
- アルミニウム材料の市場価格はステンレス材料と異なるルールが広まっている。

新聞発表されてる割には市場価格の変動は大きくないってことでいいのかな?

市場価格は需給環境によるから言い切れないけど、傾向としてはその通りよ。

技術系じゃない取引の話もこれはこれでややこしいね。

ベースの考え方が分かれば大丈夫。先物取引するわけじゃないでしょ。

ニッケルはボラティリティが高いから短期でのキャピタルゲインが狙えるね。
ってジャンルが違うよ!